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仙台高等裁判所 昭和55年(う)217号 判決 1980年12月18日

主文

原判決を破棄する。

被告人を罰金八、〇〇〇円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

原審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

本件控訴の趣意は、検察官三野昌伸が提出した検察官田代則春作成の控訴趣意書記載のとおりであるから、これを引用する。

所論は、原判決は、罪となるべき事実として、公訴事実と同旨の事実を認定した上、「被告人を罰金八、〇〇〇円に処する。訴訟費用は被告人の負担とする。」との判決を言渡したが、罰金の言渡しとともに、罰金を完納することができない場合における労役場留置の期間を言渡さなかった点において、訴訟手続の法令違反があり、その違反は判決に影響を及ぼすことが明らかであるというものである。

そこで所論にかんがみ検討すると、刑法はその一八条一項において、「罰金を完納すること能わざる者は一日以上二年以下の期間これを労役場に留置す。」と規定した上、その四項において「罰金の言渡を為すときは、その言渡と共に罰金を完納すること能わざる場合における留置の期間を定めこれを言渡すべし。」と規定しているところ、右規定が排除される場合としては、法人に対する罰金の言渡を除くほか少年法五四条の規定があるに過ぎない。

しかるに原判決は、被告人が法人でも少年でもないのに、主刑として罰金八、〇〇〇円を言渡しながら、右罰金を完納することができない場合に被告人を労役場に留置すべき期間の言渡をしなかったことが明らかであるから、原判決は刑法一八条一項四項の適用を遺脱した違法があり、右違法は刑事訴訟法三八〇条にいう法令の適用の誤りに該当する。

よって、原判決には刑事訴訟法三八〇条に規定する事由があるから、同法三九七条一項を適用して職権で原判決を破棄することとし、同法四〇〇条但書により、更に次のとおり判決する。

原判決が適法に認定した事実に法律を適用すると、被告人の原判示所為は道路交通法二二条一項、四条一項、一一八条一項二号、同法施行令一条の二、罰金等臨時措置法二条に該当するので、所定刑中罰金刑を選択し、所定罰金額の範囲内で被告人を罰金八、〇〇〇円に処することとし、刑法一八条により被告人が右罰金を完納することができないときは、金二、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、刑事訴訟法一八一条一項本文を適用して原審における訴訟費用はこれを全部被告人に負担させることとする。

よって主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中川文彦 裁判官 渡邊公雄 清田賢)

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